清水信博

2018年4月20日

短編小説「環境整備」

汚い部屋は、現代アート。
 

 
決して、衣類やティッシュや飲食物を散乱しているのではない。
 

 

 
あれは、当人一流の現代アートなのであって、これからますます変化、いや進化していく途上にあるものなのである。
 

 

 
だから「汚い」と思わず、「これは現代アートを作成しているのだ」と思えば気は楽になる。
 

 
ただ、だれもが作品を完成することはないので、たいがい失敗作で終わる。
 

 
つまり、「敗北」といってよい整理整頓を余儀なくされるのだ。
 

 

 
だが、再び真っ白なキャンバスになると、現代アートへの意欲がムラムラと沸き起こってくる。
 

 
脱いだ衣服を少し放り投げてみると昔の快感が戻ってくる。
 

 
ティッシュを不良っぽい仕草でゴミ箱に投げてみる。
 

 
だがゴミ箱に入らず床に落ちる。
 

 
ここでもまた少し過去の快感が戻ってくる。

こうして、再び現代アートへの取り組みが始まる。
 

 

 
だから、決して汚い部屋にしているのではない。
 

 
アートなのだ、アート。
 

 
そう思うことにしよう。

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