清水信博

2020年12月21日

労働分配率と企業分配率

人件費÷付加価値(F1/MQ)=労働分配率

 
 
この労働分配率は誰もが知っている有名な率である。
 
労働分配率は別名、社員分配率ともいう。 

一方、
 
(人件費以外の固定費+経常利益)÷付加価値=
 
(F2+F3+F4+F5+G)/MQ
 
これが企業分配率であることを知っている人は少ない。

【事例研究】

F1=40 , F2=30 , F3=10 , F4=10 , F5=10
 
G=40
 
MQ=F1+F2+F3+F4+F5+G=140

この例題を解いてみよう。
 

 
①労働分配率=F1/MQ=40/140=29%
 
②企業分配率=(F2+F3+F4+F5+G)/MQ=100/140=71%
 
③経営安全率=G/MQ=40/140=29%
 
④人件費以外の固定費(F2+F3+F4+F5)/MQ=60/140=43%
 
⑤損益分岐点比率=F/MQ=100/140=71%(A)

①と②を合計すれば100%になる。
 

そこで次のように考えることができる。

企業分配率に目標利益は含まれているのだから、目標利益(G)は社員に分配してはならないことになる。それはあくまでも企業が受け取るものになるからである。

一方、目標利益がマイナスであった場合はどうなるか?
 
計算上でいえば社員と会社とで痛み分けをすることになる。
 
つまり固定費に目標利益を加算した「目標付加価値に届かなかった」わけであるから、両者ともに決められた分配率により受け取るということになる。

だが、生活する糧としての給与を削られるのは厳しい。
 
そこで赤字の場合は、人件費(F1)は下げず損失の大半を企業が受け持つということが多く行われているであろう。
 

この損失の責任は経営者にあるというのは著名なコンサルタントや経営学者が言っているとおりである。
 

しかしながら未来は不確定であるがゆえに思わぬ損失が発生することもある。そのような場合には数年かけて両者ともに正しい分配を受けられるように付加価値の増大を目指すことになる。

労使ともに繁栄の道を進んで行こうとする時に、単なる損益計算だけでなく、その中にある意味合いなども共有することによって共に付加価値生産性向上を目指すという態度が大事ではないかと思う。