私は2001年からTOC(制約条件の理論)を研究し、様々な企業でTOC理論を指導してきましたが、その中で言えることは、「あまりにもシンプルな理論だからこそ信じられない。そして企業には導入されにくい」ということです。
最近は、TOC理論もS-DBR理論(よりシンプルなDBR理論)のほうが実際的なので企業に紹介しますが、これは更にシンプル(すぎる?!)ので、企業担当者は「そんなことでいいのか」とある種疑いの目で見ることもあります。
例えば製造業ですと数千万もする生産管理ソフトを使って、全工程を調べて、毎日生産指示書を作成しながら実績と比較することでうまくいくだろうと思っています。
ところが管理するポイントが多くなればなるほど煩雑になり、不確実性が増しますから、毎日のように計画の修正との戦いになります。やがて管理担当者は現場は思い通りに動かないことでノイローゼになったり、なかばあきらめたり、無計画の投入になったりすることもよく起こります。
■管理ポイントが多すぎるから煩雑になるのであれば、管理ポイントを3~せいぜい5箇所にすれば良いということを納得しないと、煩雑さから抜け出すことはできません。
■では、どこを管理ポイントとするか?
コンピュータ同様、InputとOutputとブラックボックスです。ブラックボックスとは制約資源を意味していますが、それは数箇所ある場合もあるので、せいぜい5箇所が上限です。
■とにかく納期に間に合えば良い
これも荒っぽい言い方ですが、とにかく納期に間に合えば良いのだから、それを実行するための詳細な計画に、こだわりすぎることはありません。計画が目的ではなく実際・実績が真のターゲットなのだから。
■仕事の優先順位の付け方
現場では仕事の優先順位をどのようにしているかというと、ロットの大きいもの(稼働率主義)や最終納期優先、手がけやすいものからといった傾向が目立ちます。いずれにしろ企業全体の利益からみると的外れの優先順位が納期遅れを助長していることに多くの人は気づいていません。
また現場の優先順位は現場の人だけの責任ではなく、工場管理を担当する上司や経営者が間違った評価をしているから、現場の価値観も変わってしまっているともいえます。間違いを褒めれば人は間違った方向へ行くものです。
■いくつか挙げてみましたが、これ以外にも「間違った意思決定」を招いている原因はあると思います。全部原価計算による意思決定の間違いなどは根本的なものでしょう。
それでも私は、「シンプルであることはレベルが低い」とか「シンプルすぎて信じることができず、着手すらしない」といったことも大変大きな要因であるように感じます。