清水信博

2018年5月16日

部分最適化

部分最適化は悪くはない。

一部の工程などにおける生産性向上は、誰もが経験した改善運動なのだから。その改善運動によって日本の企業は世界一の品質や生産性を達成したのであるから悪いはずがない。

まず、ここをしっかりおさえておく必要がある。

個々人の良くしようとする意欲を、そいではならない。

ただ、その個々の改善が全体にどのように影響しているかというと、仕事はただひとつで完結はせず、何人も関わり、工程も連なって、まるでチェーンやロープのように繋がっている。

だから、そのうちの、たったひとつの仕事の馬力をあげたとしても、全体が早くなるとはいえない。

そういうことを、全員が正しく理解することが大事ではあるが、個々の改善活動はそれでも大事である。

その理由のひとつが、ボトルネックは移動するということ。

TOC理論を実施していくと、ボトルネックが移動することがある。(※ボトルネックの移動に関しては、事前に予測しておくことが肝要である)

ボトルネックがどこに移動するかは分からない。

であれば、自分のところがボトルネックとなる可能性もある。

だから普段から改善活動をしておいて、良い物をすばやく流す事前準備をしておくほうが良い。ボトルネックだと特定された後になってから、あわてて改善活動をするのでは遅い。

もうひとつの理由は、市場の変化、つまりお客様の好みが変わるのは常に私達の改善より早いということ。

大量に作っておいたのに、お客様の好みが変われば投げ売りや廃棄損が出る。だからお客様の好みに応じて適量生産にとどめて損を少なくしたいわけだ。そうすれば変化したら、すぐに新しいモノを作って、いち早く提供できる。

だから「段取り回数を増やさなければならない」のである。

原材料も少し高くても必要量の仕入れでやめておくことだ。

部分最適化というと、段取り回数を減らして、大量生産するので原材料も大量仕入れをする。だから仕入れ単価(V)が安くなってという構図で物事を考える習慣ができている。

仕事とは「フロー(流れ)」で考えてはじめて、全社員への役立ちができる。そうした全体を見渡す「眼」を持つことが幹部社員には必要なことである。

そして、個々の仕事の意味や価値についても確認しておかなければならない。単に製品を作るひとつの工程であったとしても、その仕事には必ず意味や役割、価値といったものがあって、おろそかにはできないものである。

その価値を、そこで働く人達が、わかっているか、どうかを、皆で話し合って、やがては文字にしていく。

こういった仕事にかんする価値の定義がなければ、何となく出社して、何となく加工して、何となく帰宅するということになるだろう。

部分最適化も、「価値あるもの」に変容させていく。

そして、悪しき部分最適化の概念を消滅させていく。

というアプローチもある。