TOCゲームの5番だけは私が独自に開発したものです。 それは、よりシンプルなDBR理論はシンプルであるだけに理解しにくいところがありました。
それをゲーム化したことで見えるようになりましたが、それでも分かりにくいかもしれません。 そこで例え話をしてみます。
■家族貯金をやってみた ------------------------------------
例えば家族6人で暮らしているとしましょう。 それぞれが働いて収入を得ているときに、各自がその収入で生活や遊びなどまかなっていれば良いのですが、A夫君は結婚することになりかなりの出費が必要となりました。 A夫君はほとんど貯金していなかったので、他の5人にお金を貸してくれるよう頼みました。
ですが他の5人の貯金を足しても必要額に満たないので、A夫君はサラ金に借金をしようと思い夜も寝られません。 この話をS-DBR理論で解説しましょう。 まず6人全員は収入を得ているので、放っておけば各自全て使い果たしてしまいます。
今どきキチンと貯金をする人など少ないのですから。 そこでB子さんが提案。 毎月各自から1万円を集めて貯金をすることにしました。 毎月6万円集まるのだから年間で72万円になります。 この貯金は6人の誰かが困ったら取り崩すことにしようと皆で話し合って決めました。
-- TOC研修の5番目のゲームも公共事業の話も全く同じことです。 TOCゲームでは各自が持っている4枚のうち2枚を出して、それを最後尾に置く。
これが全員の貯金(Buffer)と同じことだと理解できればS-DBR理論が分かったといえます。 誰かが(1~6工程)困ったら、その貯金(Buffer)を取り崩してシステムが不安定にならないよう(納期遅れもそう)対処する。叱らない、責めない。 そして年間72万円の貯金も、40万円を切ったら大変です! 何が起こるかわからないので、6ヶ月間は各自から2万円徴収することにしました。(これがBufferの回復) そして満額の72万円になったら、また各自からは毎月1万円徴収に戻すことにするというルールも決めました。(危機回避と平常時運用) -- 公共事業についても、自社、外注、下請けなど様々な人達から集めた余裕時間を最後尾に配置して、リスク軽減をしつつ納期完成を目指します。
この場合Bufferはお金ではなく、時間(余裕)という単位になります。 このように、各自に振り分けていたものを、何割か集めて、最後に置くのがフェアな管理です。
しかもそれはリスクを軽く受け止めるクッション、ショックアブソーバー(緩衝材)の役割をしています。 これがS-DBR理論の基本構造です。 この基本構造を使えば、営業マンの年間売上計画作成時にもS-DBR理論を使うことができます。 9月決算の会社は、10月から翌年の9月と並べるのは、時間軸で、9月は10月を追い抜くことはできないという点で、月も従属性、依存関係にあります。 これでTOCゲームの製造工程と月間を並べたものは同一構造であることがわかります。 未来は何が起こるか分からないという変動性、リスク(統計的変動)と、従属性(依存事象)はいたるところに見受けることができます。 このように基本構造をしっかりと捉えていくことが大事です。 そして、Bufferとは何か? TOCゲームではチップという物量(在庫)のことを言います。 ですが6人家族の話や営業マンの目標管理では「お金」でした。 公共事業では「時間」でした。 もちろん「空間」もあります。 人数や情報などBufferは、いろいろな形があります。 そして、これが最も大切なのですが。 S-DBR理論とは、「複雑に入り組んだ、からみあったもの、コントロール不可能と思われていたもの」に対して、いかにシンプルに問題解決をするかという方法なのですが、むしろ対処する人間の心の「あり方」の問題でもあるということです。 複雑なもの、難解なものに、そのまま混乱して従うのではなく、複雑なものは複雑なものとして、それが発するリスクをいかに和らげて目的を達成するかという東洋思想に近いものがあります。 正か邪か、善か悪か、右か左かといった二元論ではなく、むしろそれをすべて包括した一元論的なものがS-DBR理論には存在しています。 簡単に言えば、「そんなに真剣に対処しなくて、いい加減でいいし、それでうまくいくんだよ」ということですね。