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清水信博

不安が上限を決定している


通常、企業が必要とする利益よりも、実際に達成された利益のほうが少ないものだ。 だから高い目標を設定するということもいえるわけだが、その高い目標すらも超える実績を達成した暁には、経営者はどのように振る舞うのか?。 ここは「カーテンの裏側」で内密に配分が決定されるのが普通のパターンである。 また企業が拡大していった先にあるのは、企業分割であり細胞分裂のような形をとることになる。いち生命体としての企業がどこまでも膨張することはない。 そうなると「分社」という形での分割になるかもしれないが、その分社の元祖は太陽工業グループの総帥であった故・酒井邦恭氏であり、著書は有名である。(著書の分社は世界中に翻訳されている)

私も銀座のオフィスに伺って、ずいぶん話をさせていただき新潟までいらしたこともあった。 その分社の最も大切な肝は、「経営権、経理権、人事権」の三つだという。 よくあるのは、経営権はまかせて、金庫もまかせたが、人事は本社が握るというパターンである。もしくは経営は任せても金庫と人事は任せないというパターンも多い。 これではライオンは育たない。 借りてきた猫のような経営者しか育たない。 分社の狙いは、本体に挑みかかってくるライオンのような猛者である。だから千尋の谷に落としても這い上がってくる者でなければ任せることはできないし、歯向かってくる者を許す度量が親になければ真の分社などできはしない。 と酒井氏は説いて、数十社の分社を育ててきた。 では、他の分社は、なぜ任せることができないのか? その理由は「不安」が心の底に根付いているからだと私は思う。 親会社から経営権、経理権、人事権の全てを切り離して、彼に任せたら不安で、何をするか知れたものではないという思いが、人を育てることを阻害しているのだと思う。 先の利益についても、目標を突破した際の利益配分等に関する不安(納税や将来への不安も含めて)が、「そこそこの目標達成」という程度に終わらせているのではないだろうか。 分社も利益も、ともに燃えるような人間集団を実現したいと願っているにも関わらず、どこかで上限を設けて、そこで落ち着いてしまう。 酒井氏はこう言っていた。 「青天井がいいんだよ」と。 分社も何もかも自分で意思決定できる楽しさがあるからこそ、生まれたばかり育っていく大変に耐えて頑張れるのだと。 私は利益目標も青天井でいいと思う。 青天井で頑張ったら、その分は会社も加わった「全員」で利益分配をすればいい。 適当な上限を設ければ、適当な努力しかしなくなる。


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